
アクチュアリー試験で無事2科目合格しました
1次試験の数学と会計・経済・投資理論(通称、KKT)について無事合格しました。
1次試験は基礎的な力をはかる試験ではありますが、きちんと対策をしないと5科目取得に3年、4年と時間がかかりかねない試験です。この記事では、合格した2科目についてどの範囲について学習し、どのような勉強法を行ったかについて解説します。
アクチュアリー試験突破は長期間のかかることを覚悟する必要がある
アクチュアリー試験は、1次試験が5科目、2次試験が2科目で構成されている試験です。
1次試験の科目を全て合格してやっと2次試験を受ける資格が与えられ、2次試験の2科目を合格してようやくアクチュアリー会の正会員になることができます。
全科目の突破に7年程度を見ている人が多いですが、それでも順調に行った場合です。
最悪、何年も受けても受からない人は受からない試験です。途中であきらめてしまう人も結構いるそうです。
私の知り合いに外資系の保険会社で働いている方がいるのですが、その方の上司にあたる方もアクチュアリー試験を何年も受け続けているがとうとう諦めてしまったとのことです。悲しい話ですが。
その一方で、要領よく取得していく人は7年よりも更に短い年数で取得していきます。仕事上取引のある企業の方々は、とても若いにもかかわらず全員アクチュアリーの正会員です。
全員、とは文字通りの意味で全員です。正社員全員がアクチュアリー正会員です。
勉強には要領、要所がありそこを抑えないと時間とチャンスを失い続ける不本意な人生になってしまうのです。
私は2科目受かっただけであり、資格取得の最初の一歩を踏み出したに過ぎませんが
誰でもできる勉強方法に落とし込むことができましたのでその手法を全て公開します。
9月から勉強開始
全く、褒められた話ではありませんが私はアクチュアリー試験の勉強を9月から始めました。
試験日は12月の第2週ですので、実質3ヶ月の勉強時間で成果を出さなければいけない状況でした。なので、とにかく時間を作って勉強をする必要がありました。もっと前から勉強を始めればいいじゃないかという突っ込みは正論過ぎて何も返す言葉がありません。
さて、数学と会計・経済・投資理論についてアクチュアリー会は試験に出す分野を明記しています。
基本的には、明記されている書籍を全てこなし、アクチュアリー会のウェブページに掲載されている過去問について過去10年分を解いておくことが望ましいそうです。
>>アクチュアリー試験過去問[アクチュアリー会]
ですが、開き直るようですがそんな時間は当然ありません。なので、読むべき書籍と、読むべき章を紹介しますのでそこだけ集中的に勉強すれば良いです。
数学で読むべき書籍及び章
「大学生の確率・統計」
この書籍は基礎的な内容ではありますが、アクチュアリー試験の数学の大問1の全12問で出題される内容が網羅的に紹介されています。実際の試験で出題される形式とは異なりますが、公式の復習を兼ねて解くと良いです。この本で現れる公式を体で覚えたならばもう別の書籍に移って良いです。
全8章ありますが、8章の保険金融数理入門はやらないで良いです。他の章は全て繰り返し解いて下さい。私は大体3週間かけて完成させました。
「明快演習 数理統計」
アクチュアリー試験の出来を左右させる本です。この本の問題は何回も何回も解きました。この本についても全て解くべきですが特に3章以降については繰り返し解いて下さい。
「検定・推定」などについては、アクチュアリー会のHPから過去問をダウンロードしてその過去問に付いている正規分布の数表を実際に使いながら電卓を叩いて解いて下さい。
アクチュアリー試験では、電卓をいかに使いこなせるかが実は非常に重要な意味を持ちます。私は3ヶ月間、平日土日関係なく1日6時間以上電卓を叩く生活をしていました。
さて、この書籍は数学の大問1の全12問で出てくる問題を網羅的に解説しているだけでなくそれぞれの典型的な問題を練習と演習の問題で解くことが出来るため非常に記憶に定着しやすい構成になっています。
出てくる問題は全て基本ですが、基本をとにかくひたすらひたすら解けるように練習するのが数学の合格の早道です。
さて、この書籍について実は大問1だけでなく大問3についてもクリティカルに効果があります。数学の大問3は「誘導アリの証明問題」が出題されることが多いです。誘導にしたがって、F分布の確率密度関数を求める、などといったものです。
こういった証明の問題もこの書籍は網羅しています。簡単な分布ではなく、余り使わない分布の証明問題は何度か見ておいたほうが良いです。
例えば、幾何分布などは誘導まで付いていたら1度も解いたことが無くともたいていの人は解けます。ですが、F分布などのように計算で使うくらいにしか触れたことの無い人はその導出をしてみろといわれた場合誘導があっても、中々解けません。
「分布の導出」は必ず何度か行ってください。確実に点数に結びつきます。例えば、前年度のアクチュアリー試験の場合F分布の導出が出来ればそれだけで20点もらえました。私はこの書籍を10月から試験の直前まで繰り返し解き続けていました。
「統計学入門」
この書籍は、問題を解くためではなくよく分からない分布を理解するために読む本です。
例えば、カイ2乗分布やF分布がどういう分布なのかという疑問にイメージを与えてくれるため、記憶に定着しやすくなります。そして、「検定」の問題では平均が既知で分散が未知の場合何検定をすればよいか、というタイプの問題は毎年必ず出題されます。
それについて、何故その分布を使うのかという説明を非常に丁寧にされています。その章を繰り返し、繰り返し読むことで必ず出題される部分は的確に迅速に何をするべきか判断できるように頭を作り変えてください。10月から、検定の問題を解くようになりましたのでイメージのつかめない分布が現れたときに頻繁にめくっていました。
これらに加えて読むべき本
アクチュアリー会が出版している「確率・統計・モデリング問題集」の「シミュレーション」の項目に目を通しておくと良いでしょう。
ただ、この問題集非常にまずいことに誤植がとにかく多く、加えて説明も分かりづらいです。
シミュレーションの問題は毎年必ず出題されていますので、ここで5点得られるかどうかがかかっています。先ほど紹介した「大学生の確率・統計」にもシミュレーションの章がありますのでそこと照らし合わせながら解くと良いでしょう。
「確率・統計・モデリング問題集」については、そこ以外見る必要ありません。
以上、4冊紹介しました。これに加えて私は過去問6年分を繰り返し解いていました。
過去問では、簡単な問題の場合は1度解いたらもう解きません。ですが、検定などのような計算問題の場合はパターンを覚えるために1度正解したとしても頻繁に手を動かすようにしました。1日1度解き、6日連続で正解をしたなら間を少し開けてまた解くということをしていました。
そして、間違えた問題、解けなかった問題は自分でパターン化してそれを暗記しました。
暗記に使ったノートは「コクヨ 測量野帳」です。
非常にしっかりしたつくりで、コンパクトなため通勤途中に作成したメモを暗記していました。
このノートを採用した理由として「書くスペースが物足りない」という点が挙げられます。
書くスペースが少し狭いと、何とか自分で工夫して書き込もうとします。
単純に字を小さくしたのでは見づらくなるだけなので例えば、自分でイメージがつきやすい絵などの記号化をしたりと
自分にあった圧縮記法を編み出しやすい、そのためにあえて「少々不自由」な大きさのノートを使いました。
会計・経済・投資理論(KKT)で読むべき書籍・章
「入門 経済学」
経済の問題は全てここから出題されます。読む書籍はこれ1冊で大丈夫です。
読む章は、1,2,3,4,5章と10,11,12,13章だけでいいです。他の章は読み飛ばしてかまいません。
上記の章を読み終えたら、過去問に取り掛かってください。それだけで良いです。なお、KKTの経済学で出題される計算問題はこの本で扱っている計算問題を抑えておけば後は過去問で計算問題のレパートリーを増やすだけで十分に対処できます。自分でパターンを整理して、先ほどの測量野帳にまとめて毎朝読んでください。
「新・証券投資論Ⅰ」「新・証券投資論Ⅱ」
投資理論はこの2冊を読み、過去問を解くことが大切になります。過去10年分の投資理論の範囲の問題は繰り返し解いてください。投資理論では、計算問題が主に出題されますので毎日電卓を叩くことを忘れないでください。
Ⅰは1,2,3,5,7章だけ。Ⅱは1,2,4章だけ読めば良いです。
読んだ後は、ひたすら過去問を解いて下さい。Ⅰは1週間ほどで完成させることが出来ますが、Ⅱは結構ハードルが高くなりますので日程には余裕を持って臨んでください。
「財務会計講義」
試験にそのまま出る。嘘だろというレベルでそのまま出る。
なので、基本的には丸暗記なのですが、とにかく網羅しなければならない範囲が多いためKKTにおいて、足きりを食らうとしたらこの科目でしょう。この本は1章から12章まで全て読んでおかなければならないです。
選択問題と計算問題が主ですが、1ついえることは分かるところから読んでいくということでしょうか。
私はまず、過去問を何年か眺めて出題されることが多い分野にあたりをつけ、そこを重点的に測量野帳にまとめました。なので、この本の場合は3章くらいまでは我慢して読み、そこから先は、分かるところだけを拾い読みをする。そして、何となく分かった気になったところで過去問を解いて知らない、分からないところを調べに戻るという
一番手間と時間がかかる科目になることを覚悟しなければならない教科です。
ちなみに、この本は毎年改訂版が3月に出ています。そして改定されたところが、その年に出題される(これはあくまで噂レベル)
なので、もし余裕があるのならば今年と前年度分を購入してどこが改定されたのかを調べて、そこをしっかり抑えておくと少しだけ心理的に有利に働くと思われます。
勉強時間
仕事時間は勉強にあてられないので、朝6時におきて出勤までの1時間半は計算問題で頭が働くようにします。電卓を叩く問題を多めに解く。そして、通勤時間は電車に揺られながら測量野帳にまとめた公式、パターンを頭の中で繰り返しとなえる。会社に着いたら、始業までの30分を使って数学の過去問を6問解くようにしています。
大問1には12問あり、その1問を解く時間の目安が5分程度なのでちょうどよいです。昼休みに入ったら、昼食は5分程度で済ませます。
以前、記事で触れましたが等質ダイエットで培った、さほど食べなくても良くなった体質のおかげで昼休みはほぼ勉強にあてられます。朝間違えた問題を解きなおしたら、投資理論の本を読み進めていました。
就業後は、家に帰って寝るまで投資理論の過去問から計算問題を解き続けます。ずっと電卓を叩きながら手を動かし続けます。眠る1,2時間前からは財務会計講義の勉強に切り替えて、眠る。という生活を3ヶ月ほど続けていたら、無事合格をすることが出来ました。
もっと余裕を持ったスケジューリングを
この一言に尽きます。
もっと早い段階から勉強を始めていたら、余裕を持った勉強計画が立てられたと思うのですが
3ヶ月に圧縮したせいでひたすら勉強付漬けの日々になってしまいました。挙句、試験直前には首がヘルニアでやられてしまう始末。皆さんは、もう少し余裕のある勉強スケジュールを立てるべきです。
体にムチ打てば3か月で2科目合格は可能ですが、そんなに圧縮したスケジュールを組んじゃダメ!という教訓を得ました。